和洋混在の存在感。

「和洋混在の存在感」

広島県呉市下蒲刈島、三ノ瀬の街にある、独特な存在感を見せる屋敷。
名を「観潤閣」と言い、昭和初期の満州で名をあげた建設業の親方が、当時の満州で流行した様式で建てた自宅だという。
つまり、木造でありながら帝冠様式という、特異な建築物。

海の護りは、朽ちてもなお

呉市安浦町
鉄筋コンクリート船「第二武智丸」廃船にて

第二次世界大戦中、日本は海軍力の基本となる艦船を建造するための金属の不足に悩まされていた。
そこで編み出された奇策が、鉄筋コンクリート造の輸送船。
「武智丸」の”武智”とは人の名で、この船の設計、建造を指揮した土木技術者、武智昭次郎に由来する。
つまりこの船は、造船技術よりむしろ、土木技術によってつくられたものであり、規模的には建築に大変近しい特徴がある。

この船体は「浮かぶコンクリート」であり、船としては当然重たかった。
戦後になるとわざわざこんな船を使う意味はなくなってしまったものの、むしろ重いことを利用して安浦漁港に座礁させられて防波堤と落ち着き、そのまま70年の時が流れる。

土木技術によってつくられた数奇な船は、結局正真正銘の土木構造物として、その特異な姿をとどめている。